松翠園 大広間ロゴ

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しょうすいえん おおひろま
松翠園大広間

松翠園について

茅葺き玄関を備えた懸崖の宴席場駅前旅館の大広間として数多くの宴会や冠婚葬祭の場としてにぎわった60畳の大空間が、駅前の斜面地に残っている。
木造平屋入母屋瓦葺き、下屋付きで、玄関部屋下屋は茅葺き。
メインの広間は支輪付き折り上げ格天井で、老松を描いた小上がりの舞台と、対面の床の間を備える。
玄関天井は寄棟状に持ち上げた船底で、竹とサビ丸太を交互に扇に配した化粧垂木を意匠とする。
随所に扇や円などの大胆に開けられた窓・欄間があり、そこに嵌められた透かし彫りと合わせて来客の目を楽しませたと思われる。
使用材料の白眉は、南縁側の床板で、幅2尺強、長さ9間半にも及ぶ無垢板を並べ、見るものを驚かす。
小屋組は無柱大空間に適したトラス架構であり、くも筋交いや箱金物なども適切に使用されており、堅牢である。
小屋裏では、棟札を兼ねた板図が発見された。
それによると、施主は栗川福松である。
他に「大工頭梁 岡本宗一、左官頭梁 米田良作」の名も確認できる。なお、栗川は尾道市公会堂建設の寄付者一覧銘盤にも「旅館松翠園 栗川福松(10万円)」とその名が刻まれている。
北側斜面に外壁が迫り、土や落葉の堆積も著しく、東側控室や北側廊下は雨漏りの被害もあり、一部にはシロアリの食害も確認できる。早急な修繕と活用提案が望まれる「尾道らしい建築」のひとつである。
渡邉義孝